経済学

右上がりの供給曲線の非現実的な仮定

右上がりの供給曲線は基礎的なミクロ経済学の本の冒頭付近に出てきます。しかしながら、右上がりの供給曲線は反現実的と言えるほど非現実的な仮定の下で成り立っており、現実の経済では、ほぼ成り立ちません。 右上がりの供給曲線は、以下のような仮定の下で…

所得は支出の結果(2)

『所得は支出の結果』の補足です。 『所得は支出の結果』であることは、経済学の「三面等価の法則(「三面等価の原則」とも)」と取引の仕組みをきちんと考察するだけで出てきます。 所得は支出に等しい 所得の値は支出の値に等しくなります。「所得=支出」で…

生産性に関する錯覚(2)

『生産性に関する錯覚』の補足です。 『生産性に関する錯覚』では、「生産量が生産性に依存する場合も生産性が生産量に依存する場合もある」と書きました。昨今の日本について言うなら、多くが後者です。したがって、マクロ経済の観点から言うなら、生産性を…

移動等の費用をゼロとしたモデルに移動等の費用は付け加えられない

あらためて、移動等の、取引に付随する費用(含む時間、以下、移動等の費用)について整理してみましょう。 ミクロ経済学の部分均衡モデルや一般均衡モデルには、移動等の費用は出てきません。部分均衡モデルや一般均衡モデルが、移動等の費用がゼロであると仮…

生産性に関する錯覚

はてなブックマークで、生産性に関する意見がいくつかありました。生産性に関しては、誤解が多いようなので、少しまとめてみましょう。 生産性は生産量と投入量の比である。 生産量が生産性に依存する場合も生産性が生産量に依存する場合もある。 広く一般的…

国の借金詐欺

「『成長で財政は黒字化』と高をくくる人に伝えたい 借金をツケ回すコスト=利払い費が増えてゆく」という記事があまりに酷いので反論します。 すぐ分かる問題点が二つ。 そんなに利払い費が心配なら、何故、債権放棄を提唱しないのか? ほとんど全ての国債…

所得は支出の結果

誰かの所得は別の誰かの支出の結果です。このことを理解せず、あたかも、天から降ってきたり、地から湧いていくるかのように思っている人々が多すぎます。 所得として受け取れるお金は、支出として支払われたお金です。したがって、社会全体としては、「支出…

ミクロ経済学が間違っている証拠

商品1個ごとにレジに並び直す?そして同じ商品という大ウソ、個々の需要家は一人の供給者からしか買わないとミクロ経済学の基礎的な間違いを指摘してきました。しかし、ミクロ経済学が間違っている証拠は、まだまだ、見つけられます。 見つけ易いものを三つ…

個々の需要家は一人の供給者からしか買わない

ほとんどの現実の市場において、ある商品を買う時、「個々の需要家はたった一人の供給者からしか買いません」 これは、一種の比喩であり、そう見なすことができるということです。そう見なして、供給者の行動も考えることができるということです。 「個々の…

同じ商品という大ウソ

「商品1個ごとにレジに並び直す?」で、ミクロ経済学が移動等の取引に付随する費用(以下、移動等の費用)を無視していると批判しました。移動等の費用を無視することにより、更に問題が生じています。 異なる商品と見なすべきものを同じ商品と見なしてしまっ…

商品1個ごとにレジに並び直す?

分けて買う必要が無い時、10個の商品を買うためにレジに何回並びますか?10回ですか?5回ですか?1回ですか? 何、バカなことを言っているのだ?と思うかもしれません。分けて買う必要が無いならば、1回レジに並ぶだけのはずです。しかし、これまでのミクロ…

転売が嫌われる理由

『転売行為は付加価値を生まない』というエントリがあります。転売は嫌われています。その理由の一つは、売り手が完全には自由な価格で商品を提示できないからです。売り手が自由な価格で商品を提示できないという、現実の経済の弱点に転売は依存しています…

なぜ一物多価なのか?

ミクロ経済学には、一物一価という言葉があります。一つの商品に一つの価格という、ミクロ経済学のある種の理想を表現した言葉です。しかし、現実の経済では一物多価です。むしろ、一物一価が成り立っている商品は、価格の統制が許された統制経済下にある商…

「国の借金」という言葉に騙されるな

「国の借金」という言葉を聞いたら、眉にツバした方がいいです。現在の日本において、「国の借金」という言葉で語られるのは、ほぼ全てウソです。「国の借金を語る」のではなく、「国の借金を騙る」のが実態です。なお、ここでは、現在の日本における円建て…

市場の力を過信してはならない

価格を統制して安く抑制しすぎると、闇市等が発生して、価格統制がうまくいかなくなります。市場を無視しすぎてはなりません。しかし、市場を万能視することも間違いです。 市場は、政府や中央銀行に対して、以下のような弱点を抱えています。 市場のルール…

四重の等価

マクロ経済には、私が、「四重の等価」と呼んでいるものがあります。税等を除外して考えると、ある取引において、「支払い(支払った金額)」と「受け取り(受け取った金額)」、「供給した商品」、「供給された商品」は、等価であるというものです。なお、商品…

経済主体の集合と見るミクロ経済学、取引の集合と見るマクロ経済学

私は、経済を基本的には(企業や家計等の)経済主体の集合と見るのがミクロ経済学、経済を基本的には取引の集合と見るのがマクロ経済学だと認識しています。言い換えれば、ミクロ経済学では経済主体の判断を中心に考えるのに対し、マクロ経済学では経済の仕組…

商品の区別は主観に帰する

『同じ商品でも買い手は売り手を選択する』と書きましたが、もっとトンデモない問題があります。商品の区別は主観に帰するという問題です。商品の区別は、突き詰めると主観から逃れられないという問題です。同じ商品か否かという区別は主観から逃れられない…

GDPはGDEを基とする

GDP(Gross Domestic Product 、国内総生産)はGDE(Gross Domestic Expenditure、国内総支出)を基とすると言えます。『所得は支出の結果』という因果関係が成り立ちますから、GDI(Gross Domestic Income、国内総所得)はGDEを基とすると言えます。「所得=支出」…

電力は例外的2

『電力は例外的1』の続きです。 電力は、構成する機器のいくつかも、商品としても、例外的なものです。 電力は、需要の数量と供給の数量がほぼ完全に常に等しいという、希有な商品です。いわゆる、売り切れや売れ残りはありません。満室や満席で断られたり…

日本経済の低迷を謀る?日本政府

『GDPでドイツに抜かれる?』という記事がありました。GDPの抑制、悪化が政府の方針なのだから、起こり得る結果です。直接的にGDPの抑制、悪化を政府の方針として掲げてはいないにせよ、GDPの抑制や悪化をもたらす多くの政策を推進している以上、政府の方針…

電力は例外的1

限界費用が増大する限界費用曲線の例として、電力を挙げている本がありました。しかしながら、電力は、商品としても、構成する機器のいくつかも、例外中の例外と言えるほど例外的なものです。 原子力発電機器や水力発電機器は、機器として例外的なものです。…

政府の債務は借金ではなく、単なる約束事

発行済み日本銀行券(紙幣)や発行済み円建て国債等が日銀や政府の債務として扱われるのは、「それらを債務として扱う」という約束事の結果に過ぎません。ゼロの階乗を1とするのと同様、単なる約束事です。 nの階乗は、nから1までの積です。ゼロの階乗はゼ…

光は遅すぎる

現実経済の市場は、ミクロ経済学の反証に満ちています。ここに挙げているのも、その一つです。 部分均衡モデルや一般均衡モデル等のミクロ経済学では、価格が一瞬で伝わり、価格の伝わる速さは無限大であるかのように仮定されています。しかし、現実には、価…

ミクロ経済学者は「合理的な人々」ではない

現実経済の市場は、ミクロ経済学の反証に満ちています。ここに挙げているのも、その一つです。ミクロ経済学者に対する皮肉になっています。 経済学の十大原理と呼ばれるものの一つに以下のようなものがあります。 合理的な人々は限界原理に基づいて考える そ…

限界費用からは、夏にホットコーヒーを売り、冬にアイスコーヒーを売る

現実経済の市場は、ミクロ経済学の反証に満ちています。ここに挙げているのも、その一つです。 限界費用から供給の数量を決めたりしていない直接的証拠もあります。限界費用から言うと、夏にホットコーヒーを売り、冬にアイスコーヒーを売るはずだからです。…

商品の限界費用を素早く、正確に知ることはできない

現実経済の市場は、ミクロ経済学の反証に満ちています。ここに挙げているのも、その一つです。 ミクロ経済学の部分均衡モデル等では、商品の供給の数量は、商品の限界費用と市場価格が一致するレベルで決まると仮定されています。しかし、現実経済に合ってい…

完全競争市場という名の完全妄想市場

現実経済の市場は、ミクロ経済学の反証に満ちています。ここに挙げているのも、その一つです。 完全競争市場ではなく、完全妄想市場、百歩譲っても完全願望市場と呼びたい程です。現実経済の市場をモデル化したものではなく、ミクロ経済学者の願望をモデル化…

世界は売れ残りで満ちている

現実経済の市場は、ミクロ経済学の反証に満ちています。ここに挙げているのも、その一つです。厳密に言うなら、完全競争市場に対する反証です。 日本では、大量の商品が様々な店の店頭で売られています。商品の種類や数の違いこそあれ、大量の商品が様々な店…

損益分岐点分析に反する供給曲線

現実経済の市場は、ミクロ経済学の反証に満ちています。ここに挙げているのも、その一つです。 損益分岐点分析(Cost Volume Profit Analysis)とは、会計分析の一つで、費用・販売数量に基づく利益を分析する手法です。 損益分岐点分析では、費用を固定費と変…