経済学が役に立たない理由(3)

サービスにおいて供給曲線は成り立たない」と書いた。製品の供給についてはどうだろうか。

価格が変化しなくても需要量と供給量とは物理法則に従ってつりあう

需要量以上の供給能力があれば、価格が変化しなくても、需要量と一致するまで供給量が減少し、需要量と供給量とがつりあう。これは物理法則からそうならざるを得ない。需要量以上の供給能力があれば、需要量と供給量とがつりあうのに供給曲線を持ち出す必要はない。

供給量が需要量を上回っている時、供給量と需要量との差は在庫の増加となる。供給量が需要量を上回っている間、在庫は増加し続ける。部屋にモノを運び込むペースが部屋からモノを運び出すペースより大きければどうなるか。部屋が満杯になり、モノを運び出すペース以上には部屋にモノを運び込めなくなる。部屋の広さやペースの差により遅いか早いかの違いはあるが、モノを運び出すペース以上には部屋にモノを運び込めなくなるのは同じである。工場では製造のための原材料を仕入れられなくなる。店舗では売るべき商品を仕入れられなくなる。すなわち、供給量が需要量を上回り続ければ、在庫の増加により物理的に供給量が制限され、需要量と同じになるまで供給量は減少する。

水道の蛇口から流れ出る水の量と水道管の中を流れてくる水の量とがつりあうように、需要量と供給量とはつりあう。どちらも単なる物理現象として説明できる。需要量は価格に影響を受けるのでつりあう数量は価格に影響受けるが、つりあうこと自体は単なる物理現象として説明できる。

右上がりの供給曲線は供給量が需要量以下であることを前提としている

供給量が需要量を上回っている時在庫は増加する。在庫には積み上げ積み下ろしの手間など様々なコストが付随するから、在庫の増加はコストの増加となる。供給量が需要量を上回っている間、供給量が一定であっても、コストは一定ではなく、増加し続ける。供給量が需要量を上回っている時、コストは供給量の関数にならず、右上がりの供給曲線も成り立たない。