均衡という信仰

これはケインズのいう「乗数効果」だが、明らかに経済学の一般論(A)と矛盾する。これをどう解決するかが難問で、「新古典派総合」では、新古典派理論(A)は完全雇用の場合で、不完全雇用の場合はケインズ理論(B')が成り立つと教える。しかし不完全雇用(不均衡)状態で新古典派理論が成り立たないのなら、価格によって均衡が成立するという命題も成り立たないので、これは論理的におかしい。もともと需要とか供給とかいうのはマクロの概念なので、要するに同じマクロ経済について矛盾した理論を教えているのだ。

「価格によって均衡が成立する」という命題が間違っているわけだから、それが成り立たなくても問題はないのでは……。ケインズの失敗は、「価格によって均衡が成立する」という命題を否定しきれなかったことだろう。
先日書いたように、価格がほぼ一定の条件下で、アイスクリームやビールは夏に供給量が増え、使い捨てカイロやホットドリンクは、冬に供給量が増える。このように、供給曲線の存在を否定する事実は、掃いて捨てるほどある。