財政赤字は大きいほど良い

先日、「超低金利を支える財政赤字」というエントリを書きましたが、あれで挙げた式からは、他にも、以下のような意外な結論が導き出されます。

  • 財政赤字は大きいほど良い。
  • 政府債務は返済の必要が無い。少なくとも、通常の債務と同様に扱うことはできない。

財政赤字は大きいほど良い

                  Y = 消費(C)+税(T)+貯蓄(S)
                  Y = 消費(C)+投資(I)+政府支出(G)+(輸出(EX)-輸入(IM))

先日挙げた式は、上記のGDI(国内総所得)、GDE(国内総支出)の式から以下のSに関する式を導き出したものです。

              貯蓄(S) = 投資(I)+(政府支出(G)-税(T)) + (輸出(EX)-輸入(IM))

大まかには、G-Tは財政赤字、EX-IMは経常黒字ですから、上記の式は以下のようになります。

              貯蓄(S) = 投資(I)+財政赤字+経常黒字

この式からは、財政赤字が増えるとSが、GDP(国内総生産)が、増えることになります。厳密に言うなら、Tを減らして財政赤字が増えるとSが、Gを増やして財政赤字が増えるとGDPが、増えることになります。

GDPだけがマクロ経済の指標ではありませんが、GDPの点からは、財政赤字が大きいほど、マクロ経済に良いということになります。
また、財政赤字が大きいほど、少ない税金で効率的に行政サービスを提供している。行政サービスの生産性が高いということになります。

このように考えていくと、財政黒字など論外と言っていいでしょう。「財政黒字は危機の予兆?」というエントリがありましたが、財政黒字になると経済がおかしくなるのは、当然という気がしてきます。

政府債務は返済の必要が無い

政府債務は、借り換えを繰り返すことにより、実質的に返済の必要がありません。

上記の式の右辺に、財政赤字が、政府債務の増加が出てくるのは、政府債務が実質的に返済の必要が無いことを暗示していると言っていいでしょう。投資(I)は、設備等の購入であり、返済の必要はありません。経常黒字は、対外債権の増加であり、貸している側なので返済の必要はありません。このように、右辺の残りの二つは、文句無く返済不要です。

上記の式の右辺には、貯蓄という言葉からすぐイメージする、預貯金があらわれません。これは、通常の預貯金の増減が、マクロ的には貯蓄の増減とならないためです。預貯金は、それの返済義務を負う銀行にとっては、債務です。負の貯蓄であり、マクロ的には、預貯金と相殺し合うため、上記の式にはあらわれません。上記の式に財政赤字があらわれる以上、政府債務を通常の債務と同様に扱えません。