計算順序という経済学の初歩的問題

経済学(特にミクロ経済学)には、計算の順序という初歩的な数学上の大問題があります。多くの経済学者がこの問題の存在を忘れていることが経済学に致命的欠陥をもたらしています。多くの経済学者は算数レベルの法則を忘れています。この問題のため、ミクロ経済学の多くには数学的裏付けが無く、ミクロ経済学の教科書は9割方書き直す必要があります。

計算の順序は一般に変えられない

計算の順序は一般に変えられません。数学的に言うなら、合成関数の交換法則は一般に成り立ちません。「1を足す。次に、2倍する」と「2倍する。次に、1を足す」は違います。元の数を「x」とおけば、前者は、「2x+2」であり、後者は、「2x+1」です。計算の順序が異なる式は、一般に別の式と見なす必要があります。別の計算と見なす必要があります。

経済には順序性がある

経済における行為には、順序性があります。ある商品を買うという行為一つとってもそうです。商品やヒトの移動は買う前に必要ですし、買って帰るのは、買う後しかできません。もちろん、商品の加工や組み立ては買う前に行う必要があります。こうした経済に関する計算は、現実の物理的順序に則した計算である必要があります。

ミクロ経済は抽象化できない

このように経済には順序性があるため、経済は抽象化できません。厳密に言うなら、ミクロ経済の多くは自然科学等と比べてかなり低いレベルの抽象化しかできません。ニュートン力学をはじめとした自然科学において理想化・抽象化したモデルが使用できるのは、それらが、物理的に同時であり、順序は表記上のものにすぎないからです。ニュートン力学では摩擦がないモデルを基にしますが、それは摩擦が他の力と同時に作用しているからです。同時だから後で足すことができます。理想気体とか完全黒体といったモデルが使えるのも同じです。同時だから、抽象化から外れる部分を後で足すことができます。それに対して、経済行為には順序性があるため、順序に則した計算をするしかありません。計算の順序を変えると別の計算になってしまいます。

ミクロ経済学は間違いだらけ

計算の順序が変えられないため、ミクロ経済学のモデルの多くが使い物になりません。例えば、部分均衡モデルにおいて、取引の前に発生する商品やヒトの移動の費用(金銭的なもの以外も含む)は扱えません。取引以前に商品やヒトの移動の費用が発生してはいけないことになります。取引以後なら良いように思えますが、これらも順序性があるため、順序に則した計算が必要になります。考えるべき因子が多過ぎて事実上不可能でしよう。