現実の市場は小さな独占市場の集まり

市場について考える時は、価格、すなわち取引される商品そのものの費用だけでなく、移動等の取引に付随する費用(時間等の費用も含む)も考慮する必要があります(商品取引所内部の取引等を除く)。移動等の費用を考慮すると、需要家は最良の条件の供給者から買うことになります。需要家は複数いるため、現実の市場は小さな独占市場の集まりとなります。

取引に付随する費用を考慮する必要がある

計算の順序は一般に変えられません。したがって、取引についての計算の順序は、物理的な実行順序に則している必要かあります。経済における判断の順序は、実行順序に則している必要があります。例えば、商品(サービスも含む)を店舗で購入する前に、商品の店舗への移動や購入者の店舗への移動が必要です。移動の前に、移動のための判断が必要です。取引に先立つ移動等の判断をした後でしか、取引に関する最終判断はできません。
取引の後に発生する費用については、後で足せば良いように思えますが、これらの費用にも順序性があり、また、多くは、取引の前に発生する費用への依存があります。取引の後に発生する費用についても、物理的な順序に則した計算が必要となります。

このように、取引に付随する費用を考慮する必要がある上、取引の前に発生する費用については、取引の前に最終判断ができていなければなりません。商品の価格だけで判断することはできません。

最良の条件の供給者から買う

商品を買う前に、店舗に行くとか、サイトを訪れるとかする必要があります。こうした費用も価格と同様に考慮する必要があります。そのため、ある需要家が商品を買う時は、価格だけでなく、付随する費用も含めた最良の条件の供給者から買うことになります。各人の供給者は、通勤や通学などの理由で動き回っています。また、需要家は膨大な数います。したがって、最良の条件の供給者は一般には複数います。相当数います。そのため、市場は、一般に小さな独占市場の集まりとなります。

厳密には、費用最小化原理ではなく、満足化原理にしたがいます。費用がある程度小さくなればそこで満足して最小の費用は求めません。そのため、厳密な独占市場の集まりではないですが、近似として、そのように考えることができます。

現実の市場は小さな独占市場の集まり

現実の市場は小さな独占市場の集まりなので、基本となる市場は、独占市場となります。現実の市場は、多くの場合、価格制限付きの独占市場として近似するのが適当でしょう。

なお、これらは、供給者より需要家が多い、いわゆる売り手独占の市場の集まりと想定しています。逆に需要家より供給者が多い場合は、買い手独占の市場の集まりになります。労働市場等がその例です。

また、商品取引所内部の取引は、これらの独占市場の集まりとは言えません。しかし、完全競争市場で近似できる市場とも言い難いです。これらの市場の正会員等は、少数で閉鎖的です。一般の参加者の場合は、多数で開放的ですが、手数料等が無視できません。一種の独占市場と見なすのが適当でしょう。