電力は例外的1

限界費用が増大する限界費用曲線の例として、電力を挙げている本がありました。しかしながら、電力は、商品としても、構成する機器のいくつかも、例外中の例外と言えるほど例外的なものです。

原子力発電機器や水力発電機器は、機器として例外的なものです。原子力発電機器は、停止状態から、非常に時間をかけて最大出力にするしかありません。ガソリン車のように出力を大きく上下させることはできません。夜間の電力需要の低下に合わせて出力を低下させることすらできないほどです。揚水発電所を作って電力の需要を作り出し、電力を蓄えているほどです。フランスが原子力発電の比率が高いのは、夜間、電力を陸続きの他国に輸出して、夜間の電力需要を作り出しているからです。天災等で出力を低下させる時は、緊急停止装置を使って停止させるしかありません。

水力発電機器も原子力発電機器ほどではありませんが、出力の自由がありません。治水や利水のために水を流す必要があります。電力需要だけから自由に出力を変更することは一般にできません。

多くの機器は、ある程度の出力で定常的に運転している時が最も効率的です。最低出力で運転している時は、けして効率的ではありません。例えば、ガソリン車やディーゼル車のアイドリング時の走行燃費はゼロです。走っていないからゼロになります。燃料消費は少なくても効率は最悪です。このように、 ある程度の出力で定常的に運転している、原子力発電機器や水力発電機器は、最も効率的な条件で運転されていることになります。しかし、それは、機器自体の動作する条件によるもので、限界費用に基づくとは言えません。