投機筋というスケープゴート

9月8日の毎日新聞朝刊の社説に「石油備蓄放出 投機筋への反撃態勢を」とあった。「投機筋」が原油価格急騰の犯人という前提で書かれている。

だが、これは心臓に当たった銃弾を殺人の犯人*1と呼ぶようなものである。犯人はその銃弾を発射した銃の引き金を引いた人物であって、銃弾に責任を負わせても意味はない。「投機筋」は値上がりしそうだから買っただけであって、「投機筋」が値上がりすると判断した要因こそ値上がりの原因である。

原油価格が急騰し、ガソリンなど石油製品の値上げが続いていたところにハリケーンが襲いかかった格好だ。しかし、原油不足が実際に起こっているかというと、そうではない。OECD経済協力開発機構)諸国の原油在庫は1年前よりむしろ増えている。

これは、「値上がりしそうだから在庫を積み増しした」という説明が成り立つ。在庫量の増減が価格に影響を受けるだけでなく、価格が在庫量の増減を引き起こすことも考慮する必要がある。

*1:人ではないから犯人とは呼ばないだろうが。