需要と供給が一致するのに価格は必要ない

需要の数量と供給の数量が一致するのに価格は必要ありません。ミクロ経済学の部分均衡モデル等では、価格が変動し、需要の数量と供給の数量が一致するかのように見なします。しかし、需要の数量と供給の数量が一致するのは、単なる物理的現象に過ぎません。価格の変動どころか、価格自体が必要ありません。

物理的現象に過ぎないということは、価格が増えると供給が増える、いわゆる右上がりの供給曲線を想定する必要はないということです。

需要の数量と供給の数量が一致するのは物理的現象である

需要の数量と供給の数量が一致するのは物理的現象です。そのことは、以下のような例を考えてみればわかります。水道の蛇口にホースの一方を挿し込むとしましょう。蛇口からホースに単位時間あたりに流れ込む量とホースのもう一方から単位時間あたりに流れ出す量は、ある程度の時間が経てば、蛇口の開度が一定ならば、等しくなります。

ここで、ホースに単位時間あたりに流れ込む量を供給の数量、ホースから単位時間あたりに流れ出す量を需要の数量と考えれば、需要の数量と供給の数量が一致することは、単なる物理的現象に過ぎません。

このような例はいくらでも考えることができます。有料道路と、単位時間当たりに有料道路に流入するクルマの台数、有料道路から流出するクルマの台数。洗面器と、それに注ぐ蛇口から洗面器に単位時間当たりに流れ込む水の量、単位時間当たりに洗面器から溢れ出す水の量。こういったものはいくらでもあります。

有限の容器と流れ込み、流れ出す定常的と見なせるフロー(流れ)を想定できれば、物理的現象に過ぎないことがわかります。定常的と見なせれば、流れ込むフローの単位時間当たりの数量は、流れ出すフローの単位時間当たりの数量と一致します。

経済においても、倉庫や保管室が有限の容器の役割をします。また、「適正在庫」という概念が、弾力性のある有限の容器の役割をします。

需要の数量と供給の数量が一致するのは、物理的現象に過ぎません。したがって、同じものに複数の価格がついていても、大きなトラブルにはなっていません。逆に、一部の商品のように価格が統制されていたりしても、大きなトラブルにはなっていません。