電力は例外的2

電力は例外的1』の続きです。

電力は、構成する機器のいくつかも、商品としても、例外的なものです。

電力は、需要の数量と供給の数量がほぼ完全に常に等しいという、希有な商品です。いわゆる、売り切れや売れ残りはありません。満室や満席で断られたり、空室や空席でのガラガラに相当することもありません。

電力においては、需要の数量と供給の数量の不一致が深刻なトラブルとなります。供給不足だと、大規模な停電が起こりえます。供給過剰だと、周波数が上がり、電圧も上がります。電力の周波数は、機械の精度に大きな影響を減らす与えることがあります。電圧が上がりすぎれば、機械が壊れます。供給不足では、周波数や電圧に与える影響は逆ですが、落雷やショートに対するガードも必要なので、ある程度以上の変動を検知すると電力を遮断するようです。

需要の数量と供給の数量を一致させる必要があるので、機器の特性や外部的要因で出力を変動させられない、原子力発電や水力発電は、ベースとなる電力にしか使えません。需要の変動に対処するため、出力を変動させやすい火力発電が必要です。需要が増大した時な予備として、老朽化した発電機器も温存する必要があります。

火力発電や老朽化した発電機器が必要なのは、需要の変動に対応するためです。皮肉になりますが、限界費用で供給の数量を決められるならば、火力発電や老朽化した発電機器を廃した方が、限界費用は少なくなります。火力発電や老朽化した発電機器の存在自体が供給の数量が限界費用以外により決まっていることを示しています。

なお、『電力は例外的1』やこの記事で電力の限界費用に関してのみ批判しているのは、見過ごせないからではありません。逆で、他の多くの供給曲線を限界費用により説明しようとするものは、ほとんどが根拠を示さない思い込みに過ぎません。ほとんどが反論以前の内容です。