所得は支出の結果(2)

所得は支出の結果』の補足です。

所得は支出の結果』であることは、経済学の「三面等価の法則(「三面等価の原則」とも)」と取引の仕組みをきちんと考察するだけで出てきます。

所得は支出に等しい

所得の値は支出の値に等しくなります。「所得=支出」であることは、経済学の「三面等価の法則」から明らかです。この式は、GDP(Gross Domestic Product、国内総生産)に関する事後的な恒等式です。取引終了時点で考えると、理論的には、常に式が成り立つということです。GDPについて、所得の値は支出の値に等しくなるように定義されていると言い換えることもできます。

もちろん、現実にはミスや不正があるので、完全に一致することはまずありません。しかし、もし、ミスも不正もなかったとしたら、完全に一致することになります。

一般に、GDPは、一年間の値で表しますが、一年間というのは、慣習に過ぎません。単位時間当たりの値であり、理屈の上では、1か月や1週間、1日単位のGDPすら可能です。時速36kmが秒速10mであるようなものです。実際、日本のGDPの速報値は、3か月単位で公表されています(厳密には季節調整済みの値です)。

GDPを単位時間で区切るだけでなく、個々の取引で区切ることも、理屈の上では可能です。個々の取引に区切っても、「三面等価の法則」は成り立ちます。つまり、個々の取引においても、「所得=支出」であるということです。

個々の取引においても、「三面等価の法則」が成り立っていることは、数学的にも証明できます。三面等価が成り立っていない取引があると仮定します。1年間の取引で三面等価が成り立っているとします。そこに、三面等価が成り立っていない取引を追加します。すると、1年間の取引で三面等価が成り立たないことになります。これは、三面等価恒等式であるということに反します。つまり、個々の取引についても、三面等価が成り立っているということになります。むしろ、個々の取引において、「三面等価の法則」が成り立っているので、1年間の取引をまとめても、「三面等価の法則」が成り立つと考えるべきでしょう。

一つもしくは少数の取引のみ考えれば良い

一つもしくは少数の取引のみ考えれば、GDPに関する経済的仕組みを考えるのに十分です。個々の取引も「三面等価の法則」を満たしており、取引の回数が増えると、合計の値が増えるに過ぎません。関係を理解するだけなら、代表的な、一つもしくは少数の取引のみ考えれば十分です。

個々の取引は支出したから成り立つ

個々の取引は支出したから成り立ちます。取引が成り立ったから所得が得られます。こう考えていくと、支出の結果が所得であるということになります。もちろん、供給者側が商品(以下、サービスも含む)を提供しなければ、取引は成り立ちません。しかし、商品を提供しただけでは、取引における価格は決まりません。供給者側は、価格を提示できますが、その価格を受け入れて取引を成り立たせるのは需要家側です。供給者側は、「安過ぎる、売らない」と取引しないことはできても、買って取引を成り立たせることを強制することは、基本的にできません。

もちろん、供給者側が商品を提供しない場合、取引は成り立ちません。しかし、需要家側が価格を承認しない場合も取引は成り立ちません。価格を承認して取引を成り立たせる決定権は、需要家側にあります。需要家が支出した結果、所得が生じます。