所得は支出の結果

誰かの所得は、別の誰かの支出の結果です。この基本的な因果関係が理解されていないため、多くの不適切な経済政策が実施されています。マクロ経済の三面等価の法則は、マクロ経済における「所得=支出」を示します。これから、個々の取引における「所得=支出」を導くことができます。そして、個々の取引における因果関係から、「誰かの所得は別の誰かの支出の結果」と導くことができます。

マクロ経済から見ると、「所得=支出」

マクロ経済から見ると、「所得=支出」です。マクロ経済学には、GDP三面等価と呼ばれる法則があります。生産面「P」と、所得面「消費(C)+税(T)+貯蓄(S)」、支出面「消費(C)+投資(I)+政府支出(G)+(輸出(Ex)-輸入(Im))」の三つが等しくなるという法則です。これらは、恒等式・定義式です。定義自体が、等しくなるようになっています。
三面等価の法則から、GDPは「所得=支出」となります。

個々の取引から見ても、「所得=支出」

個々の取引から見ても、「所得=支出」です。
もし、「所得=支出」を満たさない取引があったとします。GDPの「所得=支出」を満たしている状況で「所得=支出」を満たさない取引を行えば、GDPの「所得=支出」を満たさなくなります。恒等式が成り立たなくなります。したがって、個々の取引は「所得=支出」を満たさなければなりません。個々の取引も「所得=支出」です。

取引の因果関係を見ると、所得は支出の結果

取引の因果関係を見ると、所得は支出の結果です。
所得は、その商品(含むサービス)に関して受け取った金額から、その取引以前の分を差し引いた金額です。支出は、その商品に関して支払った金額から、その取引以前に支払った金額を差し引いた金額です。支払いの結果が受け取りです。受け取ったら支払いが生じるということはありません。支払いの結果が受け取りであり、支出の結果が所得です。

先払い、後払いは、即時払いと貸借の組み合わせ

先払いや後払いは、即時払いと貸借の組み合わせです。慣習や効率のために複数の取引を組み合わせたものです。通貨の授受を商品の授受と時間的に引き離したものにすぎません。既述の、所得は支出の結果であるということを否定するものではありません。
先払いは、購入者の販売者への通貨の貸し出しと、通貨と商品のただちの交換である即時払いの組み合わせと見なせます。通常は、即時払いは通貨と商品の交換ですが、先払いでは購入者の債権と商品の交換になります。
このように、先払いや後払いも複数の取引の組み合わせと見れば、所得は支出の結果であるということを否定するものではありません。