サルでもわかるISバランス論のおかしさ

因果関係が逆立ちしているISバランス論

経済学の学説には、あべこべと思えるものが少なくありませんが、いわゆるISバランス論(貯蓄投資バランス論)もその一つです。

GDP三面等価から、以下のISバランス式が導き出されます。

              貯蓄(S)-投資(I) = (政府支出(G)-税(T)) + (輸出(EX)-輸入(IM))

この式自体は、問題ありません。問題は、多くの経済学者が左辺のS-Iが原因で右辺の EX-IMが結果であると主張していることです。どう考えても逆です。 右辺のEX-IMが原因で左辺のS-Iが結果です。

なぜならば、 S-IによりEX-IMが決まるというのは、矛盾しているからです。

相手側のISバランス式を無視するISバランス論

相手側にもISバランス式はある

輸出や輸入には相手があります。相手側から見ると輸出が輸入で輸入が輸出です。ISバランス論は、相手側にもISバランス式があるということに気付かず、都合のいい時だけISバランス式を取り上げて、都合の悪い時はISバランス式を無視するものです。

わかりやすいように、A国とB国の二国だけからなるモデルで考えてみましょう。A国とB国の間のEX-IMは、A国のS-Iにより決まるのでしょうか?B国のS-Iにより決まるのでしょうか?A国のS-Iにより決まるとすると、B国のEX-IMはB国のS-Iによっては決まらないことになり、B国のS-Iにより決まるとすると、A国のEX-IMはA国のS-Iによっては決まらないことになります。

ある国のEX-IMはその国のS-Iにより決まる。相手側の経済条件等は関係無い。という主張は、相手側から見ると、その国のEX-IMはその国以外の国々のS-Iの合計により決まる。その国のS-Iを含め、その国の経済条件等は関係無い。という主張と同じ論理です。
つまり、日本のEX-IMが日本のS-Iにより決まる、というのは、日本のEX-IMが日本以外の国のS-Iの合計により決まる、というのと同じです。

他にもいろいろあるISバランス論のおかしさ

ISバランス論がおかしいことは、他の観点からも指摘できます。

Iは政府支出や輸出、輸入の影響を受ける

Iは、政府支出や輸出、輸入に影響を受けます。Iには、意図せざる在庫投資も含むため、政府支出や輸出、輸入によって在庫が変動すると、値が変わります。

Sは最後に値が決まる

また、Sを直接的に増減させることはできません。Sは、ISバランス式の他の変数の値に依存しています。はっきり言って、ISバランス式において論理的に最後に値が決まるのがSです。