世界は売れ残りで満ちている

現実経済の市場は、ミクロ経済学の反証に満ちています。ここに挙げているのも、その一つです。厳密に言うなら、完全競争市場に対する反証です。

日本では、大量の商品が様々な店の店頭で売られています。商品の種類や数の違いこそあれ、大量の商品が様々な店の店頭で売られていることはどこの国でも同じでしょう。これらの店頭で売られている商品は、店頭在庫とも呼ばれます。これらはある種の売れ残りです。通常の、期待した期間内では売れなかったという意味の売れ残りではありませんが、市場に供給したにもかかわらず売れていないという点で、売れ残りには違いありません。世界は売れ残りで満ちています。

このことは、現実経済の市場においては、個々の供給者が需要の制限に直面していることを示しています。つまり、完全競争市場において想定されている、「各々の供給者は、市場価格で水平な需要曲線をもつ(市場価格で無限大の需要をもつ)」かのように行動するという仮定が全く当てはまっていません。

供給しても、売れなければ損が拡大するだけです。需要の数量と一致するように供給するのが、利潤最大化の原理に従うことになります。需要の数量は、価格により一意に決まるものではありません。従って、現実経済の市場では、一般に供給曲線は成り立ちません。敢えて、供給曲線を求めるならば、供給数量一定の場合くらいでしょう。

個々の供給者が需要の制限に直面しているということは、現実経済の市場が完全競争市場とは大きく異なる異なることを暗示します。実際、供給曲線が成り立たないので、個々の供給者の供給の数量は、完全競争市場の数量とは、全く異なる仕組みで決まることになります。