暑い夏こそホットドリンクを売るべき?

長期停滞が疑問に思えるのは、「投資は金利に従ってなされる」、「金利は低いのに投資がなされないのはなぜか」というパラダイムによるものだ。筆者は、「設備投資は金利より需要リスクに強く影響される」という考え方なので、ある意味、疑問が生じない。本当の問題は、パラダイムに潜んでいるというのは、ままあることだ。

「投資は金利に従ってなされる」というのは、暑い夏こそホットドリンクを売るべきと考えるようなものです。

暑い夏には暖めるコストが減る

元々の温度が高いほど暖めるコストは減ります。コストだけから言うと、暑い夏こそホットドリンクを売るべきということになります。資金調達コストだけから言うと、「投資は金利に従ってなされる」というのは正しいのです。

生産は需要に従ってなされる

暑い夏ではなく、寒い冬にホットドリンクを売るのは、もちろん、冬の方がホットドリンクの需要が大きいからです。生産(供給)は需要に従ってなされます。需要に従って、設備投資等もなされることになります。

現実の経済はほぼ全ての商品が供給能力過剰(需要不足)

生産(供給)が需要に従ってなされるのは、現実の経済がほぼ常に供給能力過剰(需要不足)だからです。店頭で売られている商品は、店頭在庫とも呼ばれますが、これはある種の売れ残りです。期待した期間内では売れなかったという意味の売れ残りではありませんが、市場に供給したにもかかわらず売れていないという「売れ残り」には違いありません。完全競争市場などとは違い、現実の経済においては、個々の売り手は需要の制限に直面してます。完全競争市場では、個々の売り手にとっては無限の需要があり、無限の需要があるから、金利が低下すれば投資して生産量を増やします。しかし、現実の経済では、ほぼ全ての商品に「売れ残り」がある供給能力過剰(需要不足)の状態です。特に、現在のような不況の時期は、それが顕著です。供給能力過剰である以上、金利が低下しても、生産者は積極的に設備投資をしたりはしません。