売れ残った時の対処

相対取引において、供給量が需要量を上回り、商品が売れ残った時、売り手が採る対処には、以下のようなものがある。

  1. 廃棄する。
  2. 価格を下げる。
  3. 供給量を減らす。

通常は、最後の「供給量を減らす」という対処が採られることが多い。供給量を減らすことにより需要量と供給量を一致させる。競り取引においては、価格が変化することによって需要量と供給量とが一致する。需要量と供給量とが一致する価格まで価格が変化することにより需要量と供給量とが一致する。相対取引においては、通常、直接的に供給量を変化させることにより需要量と供給量とを一致させる。

売れ残った分を廃棄するのは、食品などでよく見られる。コンビニ弁当などは典型である。

価格を下げるのは、商品が陳腐化しやすい場合によく見られる。流行の激しい衣料、技術進歩の激しい情報機器などでは、売れ残った商品を価格を下げて売りさばくことがよく見られる。売れ残った旧モデルを価格を下げて売りさばくこと自体は他の分野でもよく見られる。

廃棄したり、価格を下げて売りさばいたりするのは、一般にその商品の生産が終了している場合に採られる手段である。商品の生産が終了し在庫を処分する場合によく行われる。その日に作られたコンビニ弁当と前日に作られたコンビニ弁当とを買い手は通常同じ商品とは見ない。前日に作られたコンビニ弁当を旧モデルと考えれば、売れ残ったコンビニ弁当を廃棄するのは、売れ残った旧モデルの在庫処分であることがわかる。廃棄するか、価格を下げて売りさばくかの判断は、廃棄コストと残存価値の兼ね合いなどで決まる。

商品が売れ残った時、供給量を減らせば、直接的に需要量と供給量を一致させることができる。相対取引においては、商品が売れ残った時は、通常、供給量を減らすことにより対処する。しかし、商品が売れ残った時「供給量を減らす」のが普通でありながら、そうは思われないことが多い。それは、「供給量を減らす」場合、「売れ残り」と認識されにくいからである。商品の生産が終了している場合は、旧い売れ残った商品と認識されるのが普通である。だが、商品の生産が継続しており、かつ、新しく生産された商品と在庫として残っていた商品とを区別する必要がない場合は、在庫として残っていた商品を「売れ残り」とは通常認識しない。

新しく生産された商品と在庫として残っていた商品とを区別する必要がない場合に、在庫として残っていた商品を価格を下げて売りさばくのは、新しく生産された商品を価格を下げて売りさばくのと同じである。価格が下がれば一般に需要量が増える。需要量と供給量とが一致するまで価格を下げるという手段もあるにはある。だが、この手段が採られることは少ない。なぜならば、ほとんどの場合において、供給量を減らすことにより直接的に需要量と供給量とを一致させる方が、価格を下げて需要量と供給量とを一致させるより利潤が大きくなるからである。

価格が下がれば一般に需要量が増えるとは言っても、需要の増大の割合以上に価格が下がるのでは意味がない。いわゆる需要における価格弾力性が1未満であれば、価格を下げれば売り上げも下がる。また、費用のうちで変動費は供給量が増えるにしたがい増えるから、価格弾力性が1を上回っていても、費用における変動費の比率が高ければ、利潤は増えない。すなわち、価格を下げて需要量が増えることにより利潤が増えるのは、価格弾力性が1より大きく、かつ、費用における固定費の比率が高い場合である。
そして、価格を下げて需要量を増やす方が利潤が増大すると見なされている場合、供給量が需要量を上回っているか否かに関係なく、価格を下げて需要量を増やそうとするはずである。したがって、価格を下げて需要量を増やす方が利潤が増大すると見なせるようなケースはまず残っていない。

このように、供給量が需要量を上回り、商品が売れ残った時、相対取引においては、通常、供給量を減らすことにより利潤が最大になる。