取引相手を選択しない均衡モデルと取引相手を選択する現実の経済(2)

現実の経済では売り手を選択してから買う

経済学の均衡モデルでは書いては売り手を区別しない。だが、現実の経済では、一部の例外を除いて、買い手は売り手を決定してから買う。すなわち、売り手を選択してから買う。店で買い物をするのも、Web site で買うのも、電話で出前を頼むのも、売り手を選択してから行う。
売り手の選択の理由は色々ありうる。

  • 近所にあるから。
  • 通勤・通学の途中にあるから。
  • 有名だから。
  • 好きな異性が勤めているから。
  • たまたま通りかかったから。
  • コインを投げたらオモテが出たから。

最後の例のように無差別選択かもしれないが、いずれにせよ、買い手は売り手を選択してから買う。したがって、買い手は異なる売り手の同じ商品を無差別に扱ってはいない。

均衡モデルでは売り手が供給量を増やすと売り手にとっての需要量も増える

均衡モデルでは、「売り手にとっての需要量の期待値=市場全体の需要量×売り手の供給量÷市場全体の供給量」となる。この場合、売り手が供給量を増やすと売り手にとっての需要量(の期待値)も増える。販売量は、需要量と供給量の小さい方で決まるから、供給量を増やせば増やすほど販売量が増え、売り上げが増えることになる。生産費用の増加より売り上げの増加が上回っている限り、供給量を増やせば増やすほど利潤が増えることになる。
均衡モデルでは売れ残りのリスクを他の売り手と共有することになる。

現実の経済では売り手が供給量を増やしても売り手にとっての需要量は増えない

買い手が売り手を選択してから買う場合、「売り手にとっての需要量の期待値=Σ個々の買い手の売り手に対する需要量の期待値」となる。
この式には売り手の供給量は出てこない。この場合、売り手が供給量を増やしても売り手にとっての需要量は増えない。あるレベル以上供給量を増やしても販売量は増えず、売り上げも増えない。供給量を増やしても生産費用が増加し、利潤が減少するだけである。
買い手が売り手を選択してから買う場合、売れ残りのリスクはその売り手だけが負担することになる。値下げしたりして、他の売り手にも負担させようとすることがあるが、他の売り手も対抗して値下げしたりするので多くの場合うまくいかない。

現実の経済では需要量に応じて供給量を決める

現実の経済では、一部の例外を除いて、買い手は売り手を決定してから買うため、売れ残りのリスクはその売り手だけが負担することになる。したがって、現実の経済では、売り手は需要量に応じて供給量を決める。