{経済]取引相手を選択しない均衡モデルと取引相手を選択する現実の経済

完全競争市場とは、商品の品質が均一で、売り手も買い手もやたら多い(理論的には無限大)の市場を考える。商品の品質が均一なので、買い手は売り手を区別する必要もないし、品質競争なり、買い手と売り手の間での情報の非対称性などの問題もない。

完全競争市場では買い手は売り手を区別しないが、現実の経済では一部の例外を除いて買い手は売り手を区別している。完全競争市場を含め均衡モデルで個別の供給量の和が市場全体の供給量となるのは、「均衡モデルの非現実的な仮定」で述べたように、買い手が売り手を区別していないからである。だが、現実の経済と違って買い手が売り手を区別しないため、現実の経済から見るとかなり非常識なことが均衡モデルでは起きる。現実の経済では非合理的な行為が、均衡モデルでは必然的な行為となる。

完全競争市場では同じ商品を同じ店から買わない

完全競争市場では売り手の数が無限大で売り手を区別しないと仮定しているから、同じ商品を買っても再び同じ売り手から買う確率は事実上ゼロと見なせる。したがって、完全競争市場では同じ商品を同じ店から買わないということになる。

均衡モデルではまとめ買いができない

売り手の数が無限大という仮定を外しても、現実の経済から見るとかなり非常識なことが均衡モデルでは起きる。
例えば、1日1個の割合で消費する商品を1週間に1回、7個まとめて買うとしよう。7個全てを同じ店から買う確率は、店の数をnとすると、売り手を区別しないのだから、nの6乗分の1*1となる。これは、nが2でも2%に満たない。したがって、均衡モデルではまとめ買いが成り立たない。

均衡モデルでの合理的行為は必ずしも現実の経済での合理的行為ではない

売り手を区別しない均衡モデルでは必然的な行為が、現実の経済では非合理的な行為となる。売り手を区別しない均衡モデルで合理的であっても、売り手を区別する現実の経済で合理的であるとは限らない。

*1:nの7乗分のn