政府にはシートベルトのない車に乗せない権利がある

人はシートベルトのない車に乗る権利がある、というようなことを言った人がいる。シートベルトのない車は、シートベルトのある車と比べて安全ではないだろうが、価格は安いだろう。消費者は、どちらがいいか、考えて決めればいい。それは選択の自由だ、と。

結局のところ、我々が「選択の自由」(Freedom to Choose)を行使しきれないのは、「結果の値段」(Price of Consequence)が不明だから、ということになるのではないか。

正しい判断をするにはコストがかかる。「合理的であろうとすることの非合理性」で述べた判断コストの問題である。
車を買う個人個人がシートベルトのない車とシートベルトのある車と比較して判断するとしたら、社会全体としてのコストはかなりのものになる。また、各個人が正しい判断ができるように正しい情報が伝わるようにするための啓蒙や広報のコストが政府にはかかる。
こうしたコストを考慮すると、シートベルト程度のものなら、安全基準を制定してメーカーにそれを守らせる方が社会全体にとって安上がりになるだろう。