現実の経済では取引相手を選択する(1)

「現実の経済では、無差別的か差別的かは別にして、取引相手を選択する」ということを、「取引相手を選択しない均衡モデルと取引相手を選択する現実の経済」、「取引相手を選択しない均衡モデルと取引相手を選択する現実の経済(2)」で述べてきた。現実の経済では、無差別的な取引相手の選択も差別的な取引相手の選択もある。ごく一部の例外として、取引相手を選択しない取引も存在するが、モノやサービスを扱う取引においては、取引相手を選択しない取引は存在しないと言っていい。
取引相手を選択しない均衡モデルと取引相手を選択する現実の経済とでは、不連続的な違いがある。均衡モデルでの合理的行為は必ずしも現実の経済での合理的行為ではない

取引相手を選択することによる特徴

現実の経済では取引相手を選択するため、以下のような性質をもつ。

  • 各売り手の供給量の多寡はその売り手にとっての需要量と直結しない。
  • 各売り手の供給能力がその売り手にとっての需要量を上回っている場合、その売り手はその売り手にとっての需要量と等しくなるように供給量を抑制する。
  • 各売り手は、供給能力がその売り手にとっての需要量を上回るように努める。

1番目と3番目とは矛盾しているかのように思える。だが、これは、1番目が短期的なものであり、3番目が長期的なものであるためである。