経済学における均衡信仰3

徒然なる数学な日々というブログで、『ミクロ経済学 戦略的アプローチ』を題材として、ミクロ経済学の教科書的理論を説明している。 これの【教科書企画】 5.市場取引の箇所を使って、需要曲線が理論的にどうおかしいか説明しよう。
【教科書企画】 5.市場取引の各々の図の横軸は、「数量」となっているが、厳密には、「時間当たり数量」である。経済学における均衡信仰2 で述べているように、1年間の需要量と1日の供給量とが等しくても、需要量と供給量とが等しいとは呼ばない。1年間の需要量と1日の供給量とが等しくても意味はない。そもそも、期間が全く不定では需要量も供給量も定めようがない。
そして、経済学における均衡信仰で述べたように、ある価格における個人の需要は、周期的なパルスとなる。個人ごとに周期が異なり、またその周期は様々な要因で変動するため、供給者側からすると、需要はランダムに変化するかのように見なせる。一般にこのようなケースでは、ポアソン分布と呼ばれる分布で近似できる。

需要も供給も時系列的に見ると不連続なパルスと見なせる。したがって、需要と供給とが厳密に一致することは奇跡的な偶然以外にありえず、一時的な過不足は常に生じていることになる。

一時的な過不足は常に生じているのに、現実の経済では商品の売り切れがあまり生じないのは、供給力が需要を大きく上回っているからである。