お金は天から降ってこない

お金は自然発生せず、天から降ってきたり、地から湧いてきたりしない。当たり前のことのように思えるが、このことを理解している人は意外に少ない。
開発しただけでは1円にもならないのに開発したソフトウェアの規模で生産量をあらわそうとしたりするのは、お金は天から降ってこないことを理解していないからである。開発したソフトウェアは、在庫に過ぎず、企業の儲けにまだ1円も貢献していない。あくまで、貢献する予定になっているに過ぎない。予定が狂うことはよくあることである。

在庫は必要悪に過ぎず、必要最小限にすべきというのが、トヨタ生産方式TOCの常識であるが、フォード以来の大量生産の考えから抜けきれず、作れば売れるという、お金が天から降ってくるかのような思考に陥りがちである*1。作れば売れるとばかりモノを作って、仕掛在庫や製品在庫を増やしてキャッシュフローを悪化させるケースは珍しくない。

開発しただけのソフトウェアを生産したソフトウェアと考えるには、その分の損を何処かの部署が引き受けざるを得ない。お金は天から降ってきたりせず、受け取ったお金は誰かが支払ったお金であることを理解して、お金の論理的な流れを追いかけるならば、そのことは容易にわかるはずである。

*1:この点では、経済学者が最悪である。主流派の経済学者が信奉している均衡モデルは、作ったものが市場価格でいくらでも売れると考えて生産者が行動するということが前提になっている