トヨタもセブン-イレブンも否定する経済学

どうも基本的な話が通じていないようなので、経済学批判を再度仕切り直そう。

多くの製造業のやり方を否定する経済学

部分均衡モデルの図
ほとんど全ての経済学の入門書に右下がりの供給曲線と右上がりの需要曲線とが交差する(部分)均衡モデルの図が出てくる。
だが、カンバン方式JIT(Just In Time)で知られるトヨタ生産方式や『ザ・ゴール』で有名になったTOCは、これとは相容れない。供給曲線は価格と供給量との1対1の対応を意味してる。しかし、トヨタ生産方式TOCでは、売れた分だけ作ることが要求される*1トヨタ生産方式TOCでは、価格と供給量とは1対1に対応しない。
「利潤=価格×販売量−生産費用」と見なすと、生産費用は一般に生産量に応じて増えるから、売れないのに生産量を増やしても利潤はむしろ低下する。価格と生産量とが1対1に対応するという供給曲線は、作ったものが全て売れるかのように行動しないかぎり成立しない。
供給能力はあるが、需要が不足しているから生産量を抑えるということは、製造業では普通に見られる。TOCでは、生産量を制限する要因を「制約」と呼び、需要の不足を「市場制約」と呼んでいる。

トヨタ生産方式TOCは、多くの製造業で取り入れられている。日産やホンダは、国内外でトヨタと競っているが、トヨタ生産方式の売れた分だけ作るという考えを否定したりはしていない。

商業の存在意義を否定する経済学

製造は、商業では仕入れに相当する。売れた分だけ仕入れるという考えに基づいて行動しているのが、セブン-イレブンやローソンなどのコンビニエンスストアである。仕入れたものが全て売れるのならば、多くの商品を仕入れ、置いておけるスーパーマーケットなどの方が有利であり、コンビニエンスストは対抗できないはずである。
そもそも、作ったものが全て売れるならば、卸や小売といった商業自体が必要ない。製造したメーカーが直接売ればいいのである。売るということが難しく、売ることに特別なノウハウが必要だからこそ商業の存在意義がある。

現実と大きく乖離している経済学

このように、経済学の信奉している均衡モデル*2は、現実と大きく乖離している。経済予測や、経済政策が失敗することが多いのは、経済学と現実の経済との乖離に大きな原因がある。

*1:より正確には、売れ行きの実績に基づく予想される売れ行きに従って作ることが要求される。

*2:均衡モデルを否定する経済学者がいないわけではない。だが、少数派である。