二酸化炭素という有毒ガス(3)

高濃度の二酸化炭素は、空気中の酸素濃度が高くても酸欠状態を引き起こす

私は、「二酸化炭素という有毒ガス」で「『酸欠の危険性』というのは、間違いではない」と書いている。だが、空気中の二酸化炭素濃度が高くなったため、空気中の酸素濃度が低下して酸欠になるわけではない。「二酸化炭素という有毒ガス(2)のコメント」でrobbie21さんが計算しているように空気中の二酸化炭素濃度が10%になっても空気中の酸素濃度は18%程度*1あり、この程度なら問題ないはずだが、実際には命に係わるほどの酸欠状態に陥る。高濃度の二酸化炭素は空気中の酸素濃度が高くても酸欠状態を引き起こす。これが二酸化炭素の危険性である。

高濃度の二酸化炭素は、人体内の酸素の運搬を阻害する

通常、肺で空気中から取り込んだ酸素が血液の流れによって体組織に送られる。ところが、空気中の二酸化炭素濃度が高くなると酸素が体組織に送られない。なぜならば、二酸化炭素濃度が低いところから二酸化炭素濃度が高いところへ酸素が送られるからである。通常は肺の方が体組織より二酸化炭素濃度が低いから、肺から体組織へ酸素が送られる。だが、空気中の二酸化炭素濃度が高くなり、肺の方が体組織より二酸化炭素濃度が高くなると、肺から体組織へ酸素が送られない。
人体内の酸素の運搬は、血液中の赤血球、その赤血球を構成するヘモグロビンの働きにより行われている*2。ヘモグロビンと酸素とが結びついて、それが血液の流れにより人体内の隅々まで送られる。だが、ヘモグロビンと酸素とが結びつくだけでは酸素の運搬は成り立たない。ヘモグロビンと酸素とが結びついたままでは酸素を必要とする体組織で酸素を使うことができない。酸素を必要とするところで、ヘモグロビンと酸素とが分離する必要がある。ヘモグロビンと酸素との分離を制御しているのが二酸化炭素濃度である。二酸化炭素濃度が高いとヘモグロビンと酸素との結びつきが弱くなり、分離しやすくなる。それにより、二酸化炭素濃度が低い肺でヘモグロビンと酸素とが結びつき、二酸化炭素濃度が高い体組織でヘモグロビンと酸素とが分離する。
ところが、空気中の二酸化炭素濃度が高く、肺の二酸化炭素濃度が体組織より高くなると、これが成り立たなくなってしまい。体組織に酸素が送られなくなってしまう。それどころか、むしろ、逆になってしまう。これにより、体組織が酸欠状態に陥る。

*1:ドライアイスの昇華など酸素を消費せずに単に二酸化炭素が増えた場合:2007/1/14補足

*2:人間に限らず脊椎動物共通