無知や未経験という財産

知識や経験がある種の財産であることは、ほとんどの人が認めるだろう。だが、無知や未経験も、また、ある種の財産である。

ディキシットは一般向けの科学や技術の本を読むことを好むが、いつも若者の心を持っているふりをすると言う。それによって、自分の専門分野や「盛りを過ぎた中年の知恵の結晶」とやらに束縛されないようにするとのことである。

知識や経験は、多くの場合において有用であるが、絶対的な真理ではない。時として、知識や経験が正しい解から遠ざけることもある。化学の学士号すら持たない人物がノーベル化学賞を受賞できたのも、知識や経験が不足していて、それらに惑わされることが無かったからだと言えよう。研究や開発の分野では、知識や経験が不足している新人が画期的な結果をもたらすことはさほど珍しいことではない。