経済学における均衡信仰2

経済学における均衡信仰をもう少し、細かく説明しよう。
均衡モデルの説明では、以下の2点は省略されることが多いが、これらこそが均衡モデルを否定するキーとなる。

  • 均衡モデルにおける数量は厳密には時間当たり数量
  • 均衡モデルの想定している取引は、単一の取引所における競売買

1年間の需要量と1日の供給量とが等しくても、需要量と供給量とが等しいとは呼ばない。需要量と供給量とが等しいと呼ぶのは、同じ期間における需要量と供給量とが等しい場合である。そもそも、1時間なのか、1週間なのか、1年なのか、期間が定まらないと数量も定まらない。需要量や供給量は、時間当たりの変化の量であるフローなのである。
需要量が厳密には「需要量/時間」としてあらわされるとすると、分子を増やすことだけでなく分母を減らすことでも値は大きくなる。1時間に10個の需要量と6分間に1個の需要量とは等しい。
限界効用逓減は、通常分子を増やすことを例に挙げて説明される。しかし、分母を減らすことも当然限界効用逓減を引き起こす。限界効用逓減からも需要の周期的変動が導き出される。
均衡モデルの想定している取引は単一の取引所において多数の売り手と多数の買い手とが連動して取引する競売買であるが、現実の取引の大部分は多数の売り手と多数の買い手とが個々に独立して取引する。
均衡モデルの想定している取引では、取引の成立と同時に取引相手が決定する。現実の取引の大部分では、買い手もしくは売り手の少なくとも一方が取引相手の選択を行った後で取引を行う。取引前に選択が行われるため、均衡モデルと異なり、市場全体の需要量とか市場全体の供給量とかは通常意味をもたない。