経済学における均衡信仰

suikyojin2004-09-20

トヨタ生産方式と相容れない均衡モデル

需要曲線と供給曲線の交点で市場における価格と数量がきまるという(部分)均衡モデルの図はほどんど全ての経済学の入門書に載っている。
だが、均衡モデルは本当に正しいのだろうか?
実は、カンバン方式JIT(Just In Time)で知られるトヨタ生産方式や『ザ・ゴール』で有名になったTOCは、(部分)均衡モデルとは相容れない。供給曲線は、価格により供給量が一意に決まることを意味してる。しかし、トヨタ生産方式TOCでは、売れた分だけ作ることを、すなわち需要量に一致するように供給量を決めることが要求される。トヨタ生産方式TOCでは、価格により供給量を一意に決めたりはできない。
これは、均衡モデルが、需要と供給とが常に一致するという、売り切れや売れ残りの無い経済を前提にしているのに対して、トヨタ生産方式TOCは、需要と供給とが必ずしも一致しない、売り切れや売れ残りの有り得る経済を前提にしているからである。
「利潤=売り上げ-生産コスト」とすると、利潤を大きくするということは、売り上げを大きく、生産コストを小さくすることであり、売り切れは前者を、売れ残りは後者を阻害する。

成り立たない需要曲線、供給曲線

価格により需要量が一意に決まることはごく一部の商品を除いて有り得ない。
需要量が一意に決まるためには、各個人は、365日、24時間、毎分、毎秒、眠らず、食事もせず取引を続けなければならない。もちろん、そんなことは不可能である。1週間に1回買うということは、1日は買うが、残りの6日は買わないということである。残りの6日は需要が0(ゼロ)であるということである。1日1回買うということは、1時間は買うが、残りの23時間は買わないということである。残りの23時間は需要が0(ゼロ)であるということである。ある価格における個人の需要は、周期的なパルスとなる。そしてその周期は個人により異なる。周期的なパルスになるということは、その周期と同期していないかぎり、周期的な変動としてあらわれるということである。
ある価格における需要量は一意に決らず、確率的な分布を持つ。