トヨタもセブン-イレブンも否定する経済学(5)

売れた分だけ作るカンバン方式と作ったものが全て売れると考える供給曲線

現在の経済学では、必要なものを、必要な時、必要なだけ手配するということをあまり評価しない。

という経済学への批判に対して、以下のような反論があった。

「必要なものを、必要な時、必要なだけ手配する」というフレーズからwebmasterが真っ先に連想するのはトヨタカンバン方式ですが、あれを評価しない経済学者というのは寡聞にして知りません(ミクロは専門外だから取り上げない、という方はいらっしゃるかもしれませんが)。

だが、トヨタカンバン方式を経済学者が評価しているとはとても思えない。トヨタカンバン方式をきちんと理解すると、それが、経済学の均衡モデルと全く相容れないものであることがわかる。カンバン方式をきちんと評価したら均衡モデルに対して深刻な疑問を抱くはずである。

「必要なものを、必要な時、必要なだけ」ということはどういうことだろうか。それは売れる分だけ作るということである。どれだけ売れるかを正確に予想することは不可能だから、現実には、売れた分だけ作るということが基本となる。すなわち、生産者が生産者にとっての需要に応じて生産量を決めるということである。
均衡モデルの供給曲線が生産したものが全て売れると考えて生産するという前提の下に成り立っているのとは違い、生産したものが全て売れたりはしないから売れた分だけ生産するというのがカンバン方式の基本である。カンバン方式は後工程引き取りであり、もっとも後の工程に相当する販売店で売れた分だけ順々に補充していくというのが基本である。

生産者にとって需要が有限であるということを前提としているカンバン方式と生産者にとって需要が事実上無限であるということを前提としている均衡モデルの供給曲線とでは全く相容れない。