経済全体を正しく認識している者などいない

下記のエントリを読んでいて、一人の人間に多くを求め過ぎなのではと思った。

http://diary.jp.aol.com/uvsmfn2xc/157.html

そもそも、経済全体を正しく認識している者などいないと言っていい。理論家は空理空論を振り回しているだけだし、実務家は自分の経験による狭い範囲しか知らない。理論家が空理空論を振り回しているだけなので、実務家は自分の経験を理論に基づいて体系化できない。

例えば、需要曲線と供給曲線との交点で価格と数量とが決まるという部分均衡モデルは、どんな経済学の入門書にも書かれているほど基礎的だが、そのモデルの前提となる仮定は、とんでもなく非現実的である。

suikyojin2004-09-20
供給曲線は成り立たない(1)」などで書いているように、供給曲線は「生産者が作ったものが全て売れるかのように行動する」ということを前提としている。

「利潤=価格×販売量−生産費用」と見なすと、生産費用は一般に生産量に応じて増えるから、売れないのに生産量を増やしても利潤はむしろ低下する。価格と生産量とが1対1に対応するという供給曲線は、作ったものが全て売れるかのように行動しないかぎり成立しない。

「作ったものが全て売れる」と考えるのは、商売の苦労の大部分を否定するようなものである。あまりにも非現実的すぎるので、大部分の人は部分均衡モデルの図を見てもこのような前提があることなど考えも及ばない。