実証を無視している経済学者

経済学者は理論の実証を放棄しているという主張が、どうして出てくるのかさっぱり理解できない」とsvnseedsさんのエントリが書かれていたが、こと、ミクロ経済学ミクロ経済学者については、「理論の実証を放棄している」と言われてもしょうがないように思える。なぜならば、トヨタ生産方式TOCのように、均衡モデルにおける供給曲線と全く相容れない考えが広く主張、実践されているのに、それに対して何の反論もなされている気配がないからである。

トヨタ生産方式TOCの基本的な考え方は、「売れた分だけ作る」というもので、より厳密に言うならば「過去の需要の実績から予想される需要に一致するように生産する」というものである。供給量は期待需要量とでも呼ぶべきものにより決める。というのが、これらの考えの基本であり、価格はほとんど供給量に影響を与えない。

供給曲線は成り立たない(1)」で述べたように供給曲線は、作ったものが全て売れるかのように生産者が行動することを前提としている。しかし、作ったものが全て売れるかのように考える生産者は、まずいない。合理的な生産者は、作ったものが売れ残ることを考慮に入れ、それを少なくすることを考える。ただし、売れ残りを少なくしようとすると売り切れのリスクが増大する。売れ残りも売り切れも少なくするための方法がトヨタ生産方式TOCである。

供給曲線が成り立ち、均衡モデルが正しいと経済学者が主張するのであれば、トヨタ生産方式TOCが間違っていることを経済学者は実証する必要がある。少なくとも、現在の不戦敗の状態では経済学者の説得力はゼロだろう。