「均衡モデルは、統制経済をモデル化したもの」と書いた。その根拠は、供給曲線が市場経済ではごく限られた条件下でしか成り立たないからである。
サービスにおいて成り立たない供給曲線
「東証(東京証券取引所)は営利企業」であり、株式取引の場を供給しているサービス業と見なせる。では、東証に関して供給曲線が描けるだろうか?
一般に、サービス業では需要に応じてサービスを供給しているだけであり、供給曲線は描けない。一見、価格一定の水平な供給曲線なら描けるかのように思えるが、価格毎に水平な供給曲線が描けてしまうため、線ではなく面となり、供給曲線は成り立たない。東証は独占的企業であり、特別であると考えることもできるが、映画館などについて考えても、サービス業では供給曲線は描けないことがわかる。
東証が供給しているものを株式取引の場ではなく、株式取引の場を作り出す処理能力と見なせば、数量一定の垂直な供給曲線を描ける。だが、そう見なした場合、需要量と供給量との一致は、是が非でも避けるべき悪夢となりかねない。需要量と供給量との一致を避けるために、18日に東証が取引を停止したほどである。
このようにサービスの供給については、一般に供給曲線は成り立たない。そして、実は製品の供給についてもほぼ同様のことが言える。