なぜ経済学の科学性に疑問符がつくのか

PC系の辛口評論で知られる中村さんがウェブページで、「こういう経済学は科学じゃない」と書いたことをきっかけに、経済学の科学性についていろいろな意見が出てきた。

なぜ、「経済学は科学か?」などと言われるのだろうか?中村さんが言うところの科学の定義に抵触するところが大きいからではないかと思う。

今回の文脈でいえば、数学を使って精密な議論をし、精密な観測や精密な実験で検証し、その結果からまた数学を使って精密な議論をするということを繰り返して、上昇スパイラルで真理を探究し続ける行為くらいでしょうか。

ここで重要なのは、「数学を使って」のところではない、「精密な観測や精密な実験で検証」のところである。「精密な観測や精密な実験で検証」することに欠けているのが、経済学の欠点だと思う。皆無ではないにせよ、少なすぎる。自然科学が無数の観測や実験に支えられているのとは比較にならない。そして精密な観測や精密な実験での数少ない検証結果は、必ずしも経済学の理論に肯定的ではない。数学を使ったから科学的になるわけではない。「経済学は死んだ―いま、エコノミストは何を問われているか」では、経済学が数秘術に喩えられている。