ソフトウェア工学の功罪

プログラマにソフトウェア工学の知識は必須である」ことに異論はない。だが、ソフトウェア工学には大きな欠陥がある。

学問に厚みが足りないのであれば厚みを足せばよいのです。

「学問に厚みが足りない」のであれば、それでいいのだが、余計なところに有害な厚みがあるためソフトウェア工学の有効性を大きく損ねているというのが現状である。削るべき部分があるので扱いが厄介である。

ソフトウェア開発を理解していない人々(2)」などで書いているが、ソフトウェア工学は、ソフトウェアの規模でソフトウェアの生産量をあらわすという、大きな間違いを犯している。ソフトウェアの規模は、ハードウェアの規模がそうであるように諸元の一つに過ぎない。どちらかと言えば、ソフトウェアの規模は、人月がそうであるようにコストをあらわす指標である。

生産量を間違って捉えているため、生産性向上という観点からはソフトウェア工学は全く頼りにならない。正しいものもあるが、間違ったものもあり、本当に有効か否か自分自身で充分に考える必要がある。

大きな欠陥があるため、ソフトウェア工学は、「ソフトウェア職人気質」の29ページにおいて、「皇帝が本当に着るべき着物を着ているかどうかについて話をする時が来ました」と裸の王様*1の服に喩えられているほどである。

*1:原題:The Emperor's New Clothes