市場は独占へと向かう(3)

スケールメリットネットワーク外部性について整理してみよう。

スケールメリットは、普遍的に見られる

スケールメリットは、普遍的に見られ、それこそ物々交換の時代からあった。

第二次産業革命以後、経済においては、「規模の経済」が働くようになった。

第二次産業革命以後、規模が大きいほうが効率的となるセクターが幾つか出現したからだ。

第二次産業革命以後、原材料や製品の輸送が容易になったことにより市場規模が巨大化して巨大な寡占、独占企業があらわれるようになっただけである。それまでは地域の小さな独占企業ばかりだったので、国とか世界といったレベルで見ると独占企業とは見えなかっただけである。
学習効果や分業による効率向上も、スケールが大きい方が有利である。家内制手工業であってもスケールメリットはある。

ソフトウェアにおけるスケールメリットは巨大

スケールメリットは普遍的に見られるが、その程度は一様ではない。

スケールメリットはスケールが大きくなるほど大きくなる。

これはソフトウェア特有ではなく「ヒット製品」に共通したことではないかと。

スケールメリットの絶対的な大きさは、「スケール」に依存するので、「ヒット製品」を例外扱いしたら議論が成り立たないのだが……。

「スケール」に関係なく一定の設計・開発コストが大きく、「スケール」に比例する原材料等のコストが小さいほど、スケールメリットは大きくなる。売り上げが「スケール」に比例するのに対して、全体のコストは「スケール」が増えてもほとんど増えないからである。原材料等をほぼ無視できるソフトウェアにおいてスケールメリットは巨大なものになる。

スケールメリットは、強力な参入障壁となりうる

ソフトウェアのように設計・開発コストが大きく、原材料等のコストが小さい場合は、シェアの小さな企業がシェアの大きな企業に勝つことは難しい。まして、シェアがゼロである新規参入企業はきわめて不利になる。大きな設計・開発コストを費やして参入しても、設計・開発コストを回収済みのシェアの大きな企業が価格競争を挑んでくるとひとたまりもない。新規参入企業は設計・開発コストを回収することすら困難になる。

ネットワーク外部性は、強力な参入障壁となる

依存関係を作り出すネットワーク外部性は、強力な参入障壁となる。例えば、キーボードのキー配列はQWERTY方式と呼ばれる方式が普通に使われているが、それより効率的なキー配列は既に存在する。だが、多くのソフトウェアもタイピングの教本などもQWERTY方式を前提としているため、QWERTY方式以外のキー配列はほとんど普及していない。

スケールメリットネットワーク外部性の量は質に転化する

量は質に転化する。スケールメリットネットワーク外部性のレベルが、ソフトウェアと他の普通の製品とでは桁違いに違う。ソフトウェア同士でも、OSのようにネットワーク外部性が極めて高いものも、ブラウザのようにネットワーク外部性が比較的低いものもある*1スケールメリットネットワーク外部性のレベルの高さが、ソフトウェアにおいて独占的企業が生まれやすい要因となっている。

独占には異質なんてものはない。

量が質に転化する以上、「異質」というのは必ずしも言い過ぎではない。時速1kmで這う赤ん坊と時速1,000kmで飛ぶジェット機の違いは、単なる量的なものだけではない。

*1:ネットスケープ社のミスはネットワーク外部性が低いブラウザでネットワーク外部性が極めて高いOSを握っているマイクロソフトに挑んだことだろう