市場は独占へと向かう(2)

市場は独占へと向かう」で引用した「自由市場は自殺する」の引用元である「Web2.0は自殺し、ゾンビーになって徘徊する」への批判がいくつか書かれている。だが、かなり誤解があるように思う。

独占状態が続いているならば、それは競争を挑み勝利するチャンス。

市場には様々な参入障壁があるため、競争を挑むこと自体容易ではない。

独占を維持し、スケールメリットネットワーク外部性を維持するためには地道な企業努力が必要だし、地道な努力によるじっくりとした価値創出が人々の暮らしを豊かにするとは限らない。

スケールメリットネットワーク外部性という概念を理解していないように思えるのだが……。
スケールメリットネットワーク外部性というのは、シェアが大きいだけで得られるものであって、それ自体は企業努力は必要としない。スケールメリットネットワーク外部性が作用するため、シェアが大きいほど有利となり、市場は寡占、独占へと向かう。
シェアを維持するためには企業努力が必要だが、スケールメリットネットワーク外部性が作用するため、シェアが大きいほどシェアを維持するためのコストは相対的に少なくてすむ。

Yahooがスケールメリットネットワーク外部性を維持するために、知名度を高く維持しようと様々な企業努力を行った結果がYahooブログの勝利。ところで、抜きさったことに何の意味が?

ブログだけで競争するのであれば何の問題もない。だが、ポータルにおけるシェアの優位を利用したりすることは問題になる。
ある市場における独占的な地位による優位を他の市場でも利用することは問題となる。極端な例が、ブラウザにおけるマイクロソフトの行動である。マイクロソフトは、OSにおける独占的な地位を利用してブラウザをOSにバンドリングすることにより、ブラウザのウェアを奪うどころか独立したブラウザの市場を事実上潰してしまった。

ソフトウェアにスケールメリットは無い。 大規模なソフトウェアでも、小規模なソフトウェアでも、それに期待される要求によって設計や製造コストが決定される。 ソフトの販売数やユーザーの数とは無関係なのだ。

全く逆で、ソフトウェアほどスケールメリットが作用するものは無いんだが……。誤解のもとはスケールメリットの「スケール」を「ソフトウェアの規模」と考えていること。ソフトウェアのスケールメリットの「スケール」は、「ソフトの販売数」や「ユーザーの数」である。ソフトウェアのコストの大部分を占める開発コストは、「ソフトの販売数やユーザーの数とは無関係」なので、ソフトウェアには、販売数やユーザー数当たりの、極めて大きなスケールメリットが発生する。