IPアドレスオークションに期待できない理由

IPアドレスオークションを否定するつもりはないが、IPアドレスの枯渇に対する対策としてはほとんど期待できない。IPアドレスオークションを採用しても、IPアドレスの枯渇は起きるだろう。それどころか、やり方によっては、IPアドレスの枯渇を促進しかねない。IPアドレスに関しては、円滑で競争的な市場を成立させることが極めて難しいからである。
円滑で競争的な市場を成立させにくい要因としては以下のようなものがある。

IPアドレスは、ストックなので価格が乱高下しやすい

IPアドレスは、土地や株式と同様、ストックである。普通の商品はフローと呼ばれる。原材料があれば新しく製造が可能なフローと異なり、ストックは基本的に有限なものの切り売りなので、土地や株式では価格が上昇すると供給が減少することがある。誰も買えないほど価格が上がって暴落することがある。これは、ストックでは一般に起こりうる。IPアドレスでもこのようになるリスクが高い。

IPアドレス市場は独占市場の面をもつ

同じIPアドレスは存在しないから、あるIPアドレスを買おうとすると、そのIPアドレスを売ることができるのは、一人(一社)しかいない。すなわち、IPアドレスを指定した売買では、完全な独占市場になる。独占市場においては、市場任せでは、社会全体の利益は確保できない。

IPアドレスの取引コストは巨大

IPアドレスを売るためには、使用しているIPアドレスを割り当て直して、連続する一塊のIPアドレスを空ける必要がある。これには多大なコストがかかる。IPアドレスを割り当て直す必要があるのは、買った側もである。IPアドレスがそのままなら、それはIPアドレスの死蔵である。

IPアドレスの変更はIPアドレスの所有者以外にも負担がかかる

名前が本人より他人が呼ぶためのものであるのと同様、IPアドレスも、所有者よりも所有者以外が使用するためのものである。そのため、IPアドレスの変更はIPアドレスの所有者以外にコストが発生する。