需要と供給のバランスというできの悪いジョーク

詭弁に聞こえるかも知れないが、「オープンソースがわからない」のは、オープンソースが悪いのではなく、我々が「責任の代価にいくら支払えばいいのか」わかっていないことの証しなのだ。「需要と供給のバランス」で決まるという経済学の決まり文句が冗句にしか見えないほど、この件に関しては我々は知らない。

いや、需要と供給のバランスで決まるというのはある意味ジョークにすぎないのだから、ジョークに見えるのは当然である。王様が裸に見えるのは、服を着ていないのだから当然である。

需要と供給のバランス論から抜け落ちている待ち時間

供給能力が需要を充分に上回っていないと待ち時間が長大になって破綻する。だが、そのことはあまり認識されていないようである。医療問題がよく取り上げられる「新小児科医のつぶやき」に医療の需給問題を扱った「15人のユダ書をもう一度考える」や「画期的な発言」といったエントリがあるが、これらにも待ち行列理論がでてこない。「待ち行列」でググると真っ先にでてくる「サルでもわかる待ち行列」というページでは、例題として、ズバリ、患者の病院での待ち時間が出てくるのだが……。1時間当たりに来る患者の数と、医者が1時間当たりに診ることのできる患者の数とが等しい場合、待ち時間が無限大になる、すなわち、患者は診療を受けることができずに永遠に待たされる。これが待ち行列理論が教えるところである。
余裕のあるときに製品を在庫として作っておくことのできない医療などでは、需要を大きく上回る供給能力が必要となる。