供給能力は需要を上回っていなければならない

医療供給能力と医療需要の関係は、「需要 < 供給」でなければならないと、「「たらい回し」から少し考える」というエントリに書かれていた。だが、供給能力が需要を上回っていなければならないのは、ほとんど、全てのシステムがそうであり、市場経済というシステムも基本的には、供給能力が需要を上回っている。供給能力が需要を上回っていないシステムは破綻したシステムといってよい。

供給能力が逼迫すると長大な待ち行列ができる。

広い劇場で空席を探す時の事を思い浮かべてもらえればと思います。空席が多いときにはすぐに席が見つかり短時間で座れます。ところが満席近くになれば探し回らなければなりません。探す時間が長くなっても「需要 = 供給」です。短時間で常に空席を探し出すためには、ある程度以上の空席が常に確保されていなければなりません。もう一つ重要なのは、ある程度の空席があっても経営が成り立つ収入も必要です。

そうではなく、「空席」が無くなってしまうのである。医師が90%の時間を診療にあてているとしよう。この状態で急患が発生したらどうなるか。急患は医師の都合とは関係無しに発生するから、急患の発生した時、医師は90%の確率で診療中ということになる。たとえ、医師が20人がいても、全員が診療中である確率が10%以上になる。医師が95%の時間を診療にあてているとすると、が20人の医師全員が診療中である確率は30%以上になる。このように、「空席」が無くなってしまうため、「待ち」が生じる。90%なら、待ち行列理論の基本的な待ち行列に従う場合、平均9人が待つということになる。95%ならば、平均19人になる。

商品が待つか人間が待つか

十二分な供給能力を確保しようとするとコストが多大になる。そのため、市場経済では、商品の側で「待ち行列」を作ることが多い。いくら待たせても文句を言わない商品を在庫という形の待ち行列にすることで、比較的余裕のない供給能力でまかなうことができる。市場経済で人間が待たざるを得ない場合には、供給能力に大幅な余裕をもたせるのが普通である。ニューヨークの証券取引所のシステムは、一説によれば、ピーク時の取引量の100倍の処理能力があるとさえ言われている。少なくとも、コンピュータシステムの場合、ピーク時の10倍程度の処理能力とすることは珍しくない。