IPアドレスは枯渇しつつある

IPアドレスは枯渇していない」というエントリが批判を浴びている。IPアドレスの配分が大きく偏っているという意見は正しいし、提案しているオークション方式には一理あるが、技術的な認識や知識が大きく誤っているから説得力を欠いている。現実には、「IPアドレスはいつ枯渇してもおかしくない」し、ゆっくりではあるが枯渇しつつある。

IPアドレスはアドレスであって単なる識別子ではない

IPアドレスは、ネットワーク上のアドレスであって、コンピュータの単なるID(識別子)ではない。IPアドレスはネットワーク上の位置関係を示すものなので、単に他と重複しないだけでは不充分である。
JavaBlackさんがIPアドレスを土地に喩えている。東京の土地がいくら不足しても、北海道の原野を「東京都千代田区……」とか地名を変えたところで何ら対策にならない。アドレスにはある種の規則性が必要でそれを否定するような案は使いものにならない。狭い土地を集めただけでは、広い土地の代わりにならないように、未使用の少しずつのIPアドレスを集めたところで、連続したIPアドレスのブロックの代わりにはならない。

ネットワークの再構築には多大なコストがかかる

土地よりさらにやっかいなことに、IPアドレスは一部分を切り売りするようなことすら困難であり、IPアドレスを譲渡するためには、ネットワークの再構築が必要となる。ネットワークの再構築には多大なコストがかかる。そのコストには時間も含むが、それだけではなく、IPアドレスもネットワーク再構築に必要なコストになる。ネットワークの再構築を行っている間、IPアドレスを二重に付与してどちらのIPアドレスでもアクセスできるようにして移行性を確保するといったことが通常必要になる。ネットワークの再構築自体がIPアドレスの枯渇を促進しかねない面すらある。