当たった占いだけを取り上げる占い師

外れた占いを無視して、当たった占いだけを取り上げればよく当たる占い師のように見えるだろう。

昨年死去した自由主義経済の泰斗、M・フリードマン氏は「明治の日本が成功したのは関税自主権がなかったから」という逆説を唱えた。高関税による保護主義がとれなかったがゆえに、比較優位の高い繊維産業などへの資本集積が進み、経済の近代化が加速したという見方だ。

仮にフリードマンが正しかったとしても、別に合州国は何も日本を発展させたくて黒船を送ったわけじゃない。合州国が当時の「日本」(という国そのものがまだ成立していたか怪しいのであるが)に開国を迫った理由を覚えていらっしゃるだろうか?捕鯨船の基地が欲しかったからだ。

そもそも、当時の日本の状況では、関税に関係なく、「繊維産業などへ資本集積」するしかなかったのでは?それが結果としてうまくいっただけだけで……。

戦後の資本自由化でも多くの企業が危機感をバネに飛躍した。豊田英二・トヨタ自動車工業社長(当時)は70年の年頭の辞で「総力を結集して自由化に対処し、国際競争で勝利を収める覚悟」と述べている。陰に陽に保護され続けた農業や金融業が、国際競争力を持ち得なかったのとは対照的である。

自動車にしても、様々な保護がなされてきた。競争力がついたから保護が削減、撤廃されただけである。自動車を生産していなかったホンダがいきなり自動車レースの最高峰であるF1に挑戦したのは、競争力育成のために国内メーカを限定しようとする動きに対抗したものだと言われている。