従軍慰安婦問題における軍の弁護は、弁護になっていない

従軍慰安婦問題についての話が続いている。まともなエントリも増えてきた。

そこであまり取り上げられない観点から従軍慰安婦問題を見てみよう。

騙して連れて行くことは誘拐

安倍氏のいう「広義の強制」とは、この『資料集』で吉見氏の主張した「詐欺などの広義の強制連行も視野に入れるべきだ」という詭弁である。

騙して連れて行くことを刑法では「誘拐」と呼び、力で強制的に連れて行くことを「略取」と呼び、罪としては同等である。日常用語での誘拐は、この両方を含んでいる。「詐欺などの広義の強制連行も視野に入れるべきだ」というのは、「略取」だけでなく、「誘拐」も問題とすべきだということでしごく当然の主張である。「略取」でなく「誘拐」だから別扱いにすべきだと言う方が詭弁だろう。

故買と窃盗とは罪の重さに大差ない

盗品を買い取ることは、故買とも呼ばれ、盗品等有償譲受け罪*1にあたる。故買の刑罰の重さは窃盗とほぼ同等である。盗品を買い取るのは、盗むのと同じくらい悪質とみなされている。慰安所に騙して連れて来た民間業者と軍部との関係は、泥棒と盗品を買い取る故買屋との関係に相当する。そうであれば、慰安所に騙して連れて来た民間業者と同じくらい、軍部の罪も重いと考えるべきだろう。
略取ではなく誘拐、窃盗ではなく故買というのでは、事実の正確さとしては意味があっても、弁護としては意味を持たない。すなわち、軍部も誘拐の共犯ぐらい罪深いと見なすべきである。

*1:かっては贓物故買罪と呼ばれていた