温暖化による海面上昇に対する批判の疑似科学性

北極や南極の氷が溶けて海面は上がるのか。これがそうはならないのだ。

北極は海の上に氷が浮かんでいる。コップの中に、水が入っていて氷が浮かんでいる。この氷が溶けてもコップの中の水面は上がらない。アルキメデスの法則だ。だから仮に北極の氷が溶けても海面は上がらないのだ。

相変わらず出回っているデマだなぁ。

北極、のイメージが北極海に留まるなら、その通りだ。しかし、「北極圏」にはカナダ北部、シベリア北部、そしてなによりグリーンランドが存在する。

グリーンランドに存在する水(淡水)は南極大陸氷床に次いで多い。したがって、「北極圏」の温暖化でグリーンランド氷床が溶け出せば、もちろん海面上昇するのである。

私も「グリ−ンランドの氷河が溶けると海面が上昇する」と指摘したことがあるが、北極海の氷は海に浮いているから溶けても海面は上昇しないという小学生向けのなぞなぞレベルの話が広まってしまったのだろう。「間違った情報ほど広まりやすい」の実例だ。

南極の氷は現在零下50度ほどだと言われている。だから3〜5、6度気温が上がっても氷は溶けない。しかも、南極の周りの海水が、気温が上昇すると蒸発する。蒸発すれば当然雨が降る。ところが、南極で振る雨は雪だ。だから南極の氷は溶けない、むしろ増えるということになる。

南極の氷床が全て-50℃なわけではない。特に大陸周縁部の氷床、溶け出せば氷山となるあたりが温暖化の影響をもろに被る。周縁部が溶け出せば、内陸氷河(氷床)の抵抗が小さくなり、移動速度も上がる。従って溶け出すペースも上がっていくのだ。

いや、溶け出す必要すらない。海面に流れ出すだけで充分である。南極の氷についてもアルキメデスの法則は当然作用する。仮に南極大陸の氷河が全て海面に流れ出せば、それは南極大陸の氷河が全て溶けたのに相当する海面上昇をもたらす。
温暖化による海面上昇に対する批判では、なぜか北極の氷の時だけアルキメデスの法則を取り上げるケースが多いが、実際は南極の氷の時にこそ、アルキメデスの法則は破滅的な影響をもたらし得る。
南極海の海水は-2℃と南極の大気に比べて暖かくしかも大気に比べて熱を伝えやすい。したがって、海面上昇自体が南極大陸の氷河の崩壊を促進する。そして、南極大陸の氷河の崩壊が海面上昇をもたらす。正のフィードバックが作用する。
都合の悪いことは無視したい。そういう心理は誰しもある。だからといって、ある法則を都合のいいときだけ取り上げ、都合の悪い時は無視するというダブルスタンダードでは、他人を納得させることはできないだろう。