賃金を下げても失業率は下がるとは限らない

現在は労働需要が飽和した状態

賃金を下げれば失業率は下がる」とは、楽観に過ぎる。「技術が上がれば労働需要が減る」という効果もある。が、なにより、本人がこう書いている。

まず「解雇規制を撤廃したら内部留保や配当が増えるだけ」というのは、「賃金を下げても利潤が増えるだけ」ということだが、当ブログで何度も書いているように(労働需要が飽和した特殊な場合を除いて)賃金が下がれば労働需要は必ず増える。利潤も増えるかもしれないが、それだけということはありえない。

現在が、「労働需要が飽和した特殊な場合」ではないという根拠はどこにあるのだろう。「派遣切り」どころか「正社員切り」という言葉さえ生まれている。少なくとも自動車メーカなどでは、「労働需要が飽和した特殊な場合」としか思えない。

「賃金が上がれば労働需要が減る」ことは、「賃金を下げれば失業率は下がる」ことを意味しない

要するに、労使交渉で賃金が上がれば労働需要が減るという当たり前のメカニズムで、大恐慌期の失業は説明できるのだ。

「賃金が上がれば労働需要が減る」ことは、「賃金を下げれば労働需要が増える」ことを、すなわち「賃金を下げれば失業率は下がる」ことを意味しない。なぜならば、これまた、本人が書いているように、「需要曲線がnで屈折している(需要が飽和する)ような特殊な場合」がありえるからである。もちろん、完全な折れ線になっていることはありえないが、折れ線で近似できるような急激な変化をしているという可能性は十分にある。価格が低くなるほど需要における価格弾力性が小さくなる、すなわち、価格が低くなっても需要がさほど増えなくなる。これは、ほとんどあるゆるモノについて見られる現象で、労働需要が例外だという根拠はない。