アメリカの債務上限は有害無益

撤廃されるべき債務上限

アメリカの債務上限問題はギリギリで回避されましたが、今後のためにも撤廃されるべきです。

法律の中には、あまりにも危険であるため残しておいてはいけないものがいくつかある。

例えば、米国の債務上限について考えてみよう。あの法律は、米国が自分自身を標的にして設置した核爆弾のようなものであり、爆発すればその影響は全世界に及ぶ。決して使ってはならないものなど、存在させるべきではない。

現在行われている協議の結果に関係なく、この法律は撤廃する必要がある。これほど破壊的な脅威にさらされていては、秩序ある政府を目指すことなどできるはずがない。

経済的自爆テロやそれをほのめかすことによる脅迫に悪用されるだけで、そうした「テロリスト」以外には本質的に使い道の無い法律など撤廃されるべきです。

アメリカ国債のデフォルトは世界経済に深刻なダメージを与える

アメリカの債務上限がアメリカ国内に閉じた問題であれば、アメリカ国民ではない私が口をはさむ問題ではありません。しかし、アメリカ国債は、日本政府をはじめ、多くの、政府、中央銀行、金融機関が保有しており、そのデフォルトは世界経済に深刻なダメージを与えます。また、アメリカ国債のデフォルトは基軸通貨としてのドルに致命傷を与えかねません。基軸通貨の交代という形でも、世界経済に深刻な混乱とアメリカ経済に深刻なダメージを与えるでしょう。

米国債は世界で最も重要な安全資産だ。もしこれがデフォルトするようなことがあれば、たとえそれが一時的であっても、リスクプレミアムにはすぐに影響が及ぶだろうし、資金の避難先としての役割に恒久的なダメージがもたらされることも十分にあり得る。

債務上限は本質的に矛盾

そもそも、予算は議会の承認を経て成立するものです(この辺りは日本も同じ)。すなわち、予算成立時点で債務の上限を超えることも承認されたとみなすこともできるわけで、予算と別に債務上限を設定することは、予算と矛盾することになります。

ジョージ・ワシントン大学のニール・ブキャナン氏とコーネル大学のマイケル・ドルフ氏が先日著した論文によれば、法的拘束力を持つ債務上限は大統領に以下のような「トリレンマ」を突きつけるという。

「債務上限を無視して新しい国債を一方的に発行すれば、連邦議会が持つ借り入れの権限を侵害することになる。税金を一方的に引き上げれば、連邦議会が持つ課税の権限を侵害することになる。また、歳出を一方的に削減すれば、連邦議会が持つ歳出の権限を侵害することになる」

このように、債務上限は有害無益ですから、撤廃されるべきです。ましてや、日本に債務上限やそれに類するものを新設しようなどというのは論外です。

このままでは仮に消費税率を10%に引き上げても、債務の累増問題を解決できない危機に直面する。米国のような債務上限の設定や歳出を強制的にカットできる条項を設定すべきだ。私には、米国債のデフォルト回避に向けて議論している米国の方が、無制限の債務膨張を止められない日本よりも、ずっと健全であると映る。