あさってな心配

「作りすぎのムダ」という言葉が、あります。『トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして』において最初に挙げられているムダが、「作りすぎのムダ」です。モノを作らない工場は潰れますが、モノを作りすぎる工場も潰れます。多くの場合、増やしすぎることも、減らしすぎることも害があります。ミクロ的な経済だけではなく、マクロ的な経済にも当てはまります。ある条件下でうまくいった経済政策を別の条件下でも実施するというのは、バカの一つ覚えにすぎません。

戦中・戦後すぐの高インフレの原因が、当時の大蔵大臣・馬場?一が既にインフレが発生しているにも関わらず軍部の言いなりとなって実行した財政ファイナンスだったことから、マスコミや学者が財政ファイナンスを忌避する理由は解らないでもありませんが、既に熱かった湯をさらに沸かして沸騰した事例だけを引き合いに出して、冷たい湯を温めるのに有効な方法に封印をしたがるというのは、思考停止以外の何物でもないでしょう。

「重度の栄養失調の患者に食べ物を与えるのを、糖尿病になる虞があると反対している」という喩えを思いつきました。確かに栄養過多が続けば糖尿病になりますが、今の日本経済は、栄養失調による衰弱で瀕死の重態です。必要なのは、十分な栄養補給であり、糖尿病の心配は栄養失調を完全に脱した後でするべきことです。