同一労働という難問

非正規雇用の人々の給与」というエントリで、「同じ仕事をしている場合、リスクの点でアルバイトなどの非正規雇用の人たちのほうが賃金が高くあるべきだ」という主張がなされている。基本的には賛成なのだが、大きな問題がある。「同じ仕事」という前提が主観的なものであるということである。同じ仕事ではないから賃金も違うのだと言われたら、それに対する反論は難しい。

分類は絶対的なものではない

ご都合主義な一般均衡モデル」で述べたように、「同じ種類のものと見なすか異なる種類のものと見なすかは価値判断の結果による」のであり、絶対的なものではない。その日に作られたコンビニ弁当と前日に作られたコンビニ弁当とを買い手は通常同じ商品とは見ない。
「同じ仕事」という前提が成り立たなければ、「同じ仕事をしている場合、リスクの点でアルバイトなどの非正規雇用の人たちのほうが賃金が高くあるべきだ」という主張は無意味なものになってしまう。

市場は本質的な不完全さを抱えている

分類が主観から逃れられず、価値観から自由ではない以上、「一物一価」は絵に描いた餅にすぎない。「同一労働・同一賃金」もそうである。ましてや、「同じ仕事をしている場合、非正規雇用の人たちのほうが賃金が高くあるべきだ」という主張はなおさらである。
「同じ仕事をしている場合、非正規雇用の人たちのほうが賃金が高くあるべきだ」という主張を現実のものにするのは、市場に任せていたら不可能であり、法的規制などに頼るしかない。