経済学のナンセンスさ

完全競争市場を想定することのナンセンスさ

物理学で理想気体や完全剛体を想定することと、経済学で完全競争市場を想定することとが同じだと主張する人は少なくない。

科学の第一ステップは「単純モデル化」と「理想化」ですので、基礎と呼ばれる分野ではまず、あえてこういった「不自然な系」を使うのです。

そしてそういったモデルについて精緻化した後に、やっと現実世界への適用が始まる。

残念ながら、経済学の場合、そう単純にはいかない。なぜならば、人間は「系」を認識して行動を変えるからである。完全競争市場で合理的な行動であっても、現実の市場で合理的な行動であるとは限らない。したがって、完全競争市場というモデルが現実の経済を理解する助けになるかどうかは、「単純モデル化」や「理想化」では判断できない。
微生物には、酸素が充分にある場合はブドウ糖二酸化炭素と水に酸化する酸素呼吸を行い、酸素が不足する場合はエタノールや乳酸を生成する無気呼吸を行うものがいる。人間を含め、環境により行動を変えるものについて考える場合、「単純モデル化」や「理想化」をしているつもりで、まったく別のモデルを当てはめようとしていないか検証する必要がある。
完全競争市場での人間の行動を現実の行動にも当てはめようとするのは、酸素が不足する場合に無機呼吸を行う微生物が酸素が充分にある場合にも無機呼吸を行うと考えるようなものである。