原油価格の上昇は原油の供給量を減少させる

原油価格の上昇の原因について議論がさかんだが、非常に重要な観点が欠落している。石油会社や産油国にとっての観点である。石油会社や産油国にとっては、原油価格の上昇は原油の供給量を減少させようとする方向に働く。経済学の均衡モデルに洗脳されて右上がりの供給曲線を無意識に仮定しているのだろうが、原油に関してはその逆の傾向がある。2年前にも以下のように書いている。

なぜ、原油価格が高くなると産油量が減少するのか。それは、原油の生産が本質的には資産の切り売りに他ならないからである。油田における原油の埋蔵量は有限であり、「油田の産油可能年数 = 油田の埋蔵量 ÷ 油田の年間産油量」とおけるから、年間産油量を増やして産油可能年数を減らすか、年間産油量を減らして産油可能年数を増やすかのトレードオフを石油会社や産油国は迫られる。原油価格の上昇は、年間産油量を減らしながら年間の売り上げを増やすことを可能にするから、年間産油量を減らして産油可能年数を増やす方向に進みやすい。

実際にこういうデータもあるようである。

実際World Oil Balance(xls)というデータを見ると、2006,2007年の原油供給量がそれぞれ84.60, 84.55(百万バレル/日)で、2007年は前年より減っている。昨今の世界の経済成長ペースからするとこれじゃ足りないでしょう。

そしてベネズエラチャベスに至っては、石油価格をつり上げてアメリカが困るのを楽しんでいるかのようだ。産出量のデータを見ると90年代には350万バレル/日も生産していたのに、昨年はそれが266万バレル/日まで減っている。自分の国だけでなく、OPECに対して生産を抑えるよう求めてもいる。嫌がらせとしか思えない。

嫌がらせの面も否定できないが、油田の枯渇を遅らせるために産油量を減らすのは、産油国にとって合理的な判断である。