取引費用をモデルに反映することができない経済学(2)

価格や他の取引条件が同一の時に近い店で買おうとする。そういったごく当たり前の選択を経済学のモデルにも反映させるべきだと言いたいだけである。ところが、経済学の均衡モデルは、同じ商品を無差別的に選択することを前提にしている。そのため、取引相手との距離で取引相手を選択するといった、ごく当たり前の条件を追加しただけでも、モデルが成り立たなくなる。

これに対して、以下のような批判があった。

むしろ、取引相手との距離なんてものをモデルに組み込むのは至極簡単で、価格に含めて考えればよいだけだ。取引相手との距離は計れるもので、取り組みやすい。「選択を経済学のモデルにも反映させるべき」っていうのには異論はない。ぜひ自分の手で反映させてほしい。別にむずかしくはないし、すでにさまざまな業績がある。

全然簡単ではないんだが……。なぜなら、取引相手との行き来の回数は、取引の数量と独立だから。1回の行き来でどれだけの数量取引するかは不定なので、価格に含めて考えればいいというわけにはいかない。
取引相手との距離を価格に含めて考えたりせず、単に取引相手を差別的に選択するとする方が、まだしも使い物になるモデルが作れる。ただし、このモデルの場合、価格は市場で別途定まる外部変数としなければないだろう。