ビョルン・ロンボルグに不都合な真実

映画「不都合な真実」の映画評が話題になっているが、かなり胡散臭い代物だった。自説に都合のいい点をつまみ食いした、という批判は、「不都合な真実」以上にこの映画評にこそ当てはまると思う。

自説に都合のいい点をつまみ食いした最も典型的な例は以下の箇所だろう。

イギリスだけでも、気温が上がれば暑さによる死者は2050年までで2000人増えるでしょうが、寒さによる死者は20000人減るはずです。

温暖化の問題を暑さによる死者の問題に矮小化している上に、イギリスという寒い、不適切な国を例に挙げて、さらに矮小化している。暖流のおかげで冬の寒さが大幅に緩和されているものの、イギリスは緯度的には本来かなり寒いはずの国である*1。したがって、暑さによって死ぬことは、寒さによって死ぬことより、もともと圧倒的に少ない。温暖化の影響を考える場合において、暑さによる死者の増加の方が、寒さによる死者の減少より、寒い国では少ないというだけにすぎない。
イギリスより低緯度な、すなわち暑い国に住んでいる人の方がはるかに多い。イギリスは、特殊な例外にすぎない。

*1:ロンドンは札幌や稚内より北にある。